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第551話 決別 18-4
俺の気持ちも察してくださいと小さく呟いた藤堂の気持ちに、今頃だが気づいてしまった。いまのはあまりにも失言過ぎた。本人の同意もないまま行為に及ぶのは、いくら恋人同士でも容易くしていいことじゃない。
酔っ払っていたとはいえ、一方的に迫られた藤堂の気持ちを考えれば、どれほどの我慢を強いたことだろうか。あまりにもひどい自分の行動に胸が痛くなった。やはり僕は酔っ払った挙げ句、あれで、と言われるくらいのことはしでかしたんだ。
「まだ酔ってるんじゃないですか。お風呂にでも入って少し頭すっきりさせてきてください」
ヤバイ、これは本気で怒らせたかもしれない。こちらを振り向きもせずにさっさと立ち上がり、藤堂は客間を通り過ぎて部屋を出ていこうとする。
「待った! 行かないで! ごめん! 本当に悪かった」
こんなところに来て喧嘩なんてしたくない。もうそもそも誰が先にとか、あとからどうとか、どっちが悪いとかそんなのはどうでもよくて。ここまで来てギスギスしたまま帰るとかは絶対嫌だ。
「俺も頭を冷やしてくるので、ゆっくりお風呂に入ってください。内風呂まだ入ってないでしょう」
「……藤堂」
情けなくしょげて、捨てられた犬か猫みたいな気分になってしまった。けれどそんな僕を振り返り、藤堂は困ったように笑って肩をすくめた。
「心配しなくても帰ってきますよ」
「絶対?」
「当たり前でしょう。ちょっとだけ行ってきます」
いってらっしゃいと見送ると、急に部屋の中がしんとなる。昨日も今日も僕は失敗してばかりだ。それなのに最後には必ず笑って僕を受け止めてくれる。そんな優しい藤堂に涙が出た。
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