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第552話 決別 19-1
恋愛とかそういうのって、あまり僕には向いていないのかなと思うことがいままでもよくあった。よほど根気強い人でなければ、僕の鈍さとかデリカシーなさ過ぎなとことか、言葉が足りないところとか、我慢できないと思う。実際にそれが別れる原因になったこともある。それがすべてではないけれど、怒られることは多かった。
いままで何人かと恋人の付き合いをしたことはあるが、こんな僕と一緒にいてくれた人の中でも、やはり藤堂が一番優しいと感じる。藤堂は男だから、女性と違って寄りかかっても受け止めてくれる部分があるからなのかもしれない。けれどやはりそれだけじゃなくて、なによりも一番に僕のことを気にかけて考えてくれる。女性の場合は僕がその立場であるべきなんだろうけど。
今頃になって気づいたが、僕はどちらかというと相手に甘えたい人間だったんだ。いままではその逆で、相手に頼りにしてもらえることが自分を必要としてくれているようで嬉しいと思っていた。
でも僕の本音は違ったんだ。藤堂の傍にいると自分でも気づかなかった本当の僕が顔を出す。もっと甘やかして欲しい、もっと僕だけを見ていて欲しい。もっと愛していて欲しい。そう思っている自分に気がついてしまった。
「佐樹さん、辛くない?」
「ん、平気」
あれから言われた通りに風呂に入って少し残っていた酔いを覚ました。そうしたらしばらくして藤堂も帰ってきてくれて、顔を見たらもうなんだか離れるのが嫌になってしまった。そして酔いは覚めたものの、二日酔いの頭痛だけはいまだ残っていたので、チェックアウトの時間までゆっくり休んでいこうと藤堂が提案してくれた。
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