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第553話 決別 19-2

 時間まではかなり余裕があったので、いまはのんびりと二人で過ごしている。しかも藤堂の膝枕つきだ。頭を撫でてくれる手が優しくて、胸に安堵が広がっていく。  僕の迂闊な発言で喧嘩をしてしまって、どうなることかと正直冷や汗をかいた。けれどなにごともなかったように接して、先に折れてくれた藤堂のおかげでなんとか元通りになれた。それが嬉しくて黙っていてもニヤニヤと顔が緩んで仕方がない。そんな自分が気持ち悪いと思うけれど、本当にもうどうしようもない気分なのだ。 「藤堂このあとまっすぐ帰る?」 「佐樹さんはどうしたいんですか?」 「とりあえずは一緒に昼は食べたい」  帰りの新幹線は時間を決めていない。状況に応じて帰る時間を決めようと思ったからだ。それにいまは僕の家には母がいるし、向こうへ戻ればすぐにお互い帰路につくことになる。一緒にいられるならばできるだけ長いほうがいい。  また明日になれば学校で会うことにはなるけど、こういう時間はいましか過ごせない。 「欲がないですね」 「んー、ほかにどっかあるか?」 「そうですね、どこか行ける場所が近くにあればいいですけど。調べてみます?」 「ああ、うん」  僕の髪をすくいながら撫でて、藤堂は空いた手で携帯電話をいじる。  なんだろうかこの幸福感。至福な時間がこのままずっと続いたらいいのにと思わずにいられない。藤堂が卒業したらこういう時間がもっと増えるだろうか。もちろんお互い仕事や学校があるのでずっと一緒にとはいかないかもしれない。

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