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第559話 決別 20-4
よりにも寄ってうっかりしていそうだなんて。でも言われた言葉は残念だが的を射ていると思う。僕は自分で言うのもなんだが、不器用過ぎていっぺんにたくさんのことができないほうだ。ちょっと言い当てられて悔しい。
けれどそんな自分を知っていても好きでいてくれる藤堂の気持ちが嬉しかった。いままでだったら不服を申し立てられても文句は言えない立場だった。僕は気持ちが空回りすることが多かったのだ。相手を思うことがすれ違いを生んで、隙間を埋めようとするほどに失敗をした。
それなのに藤堂といると、僕がつまずいても藤堂が手を伸ばしてくれる。開いた隙間は寄り添って埋めてくれた。一緒にいてこんなに安心できる人はほかにいない。
「もう頭痛は平気ですか?」
「ああ、もう大丈夫そう」
初めての旅行で喧嘩をしてしまったのは想定外だったが、きっとこれから先も喧嘩やすれ違いが少なからずあるだろう。でも些細なことで離れ離れになってしまわないように、繋いだ手をしっかりと離さないでいようと思う。もう何度も失敗はしたくない。
藤堂と一緒にいるために僕はもっと広い視野を持って、周りを見渡せるくらいの余裕を持たなくてはいけない。うっかりしてるだなんてもう言われないようにしなければ。
「じゃあ、そろそろ出かけましょうか」
「うん」
どちらが誘うでもなく自然と口づけを交わして、僕らは手を取り合う。
いまこの瞬間、握りしめた手のぬくもりは忘れないようにしたい。藤堂がいてくれるいまは、なに気ない時間だけれど。決して当たり前ではないのだ。彼が愛してくれるその想いも、奇跡なんだってことを忘れたくないと思った。
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