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第560話 決別 21-1

 休日を利用して藤堂と初めて二日間も一緒にすごすことができた。あれから食事をして水族館にも行って、すごせるだけの時間をすごした。そして陽が暮れた頃に帰りの新幹線に乗り、帰路へついた。でもこんな日をそう簡単にすごせることができないとわかっているから、どうしてもお互い別れは自然と惜しくなる。  僕の最寄り駅で一緒に電車を降りた藤堂が、改札口の近くまで見送りをしてくれるが、なかなかどうして、じゃあまたの一言が出てこない。一人そわそわしている僕を見て、藤堂は静かに微笑んでいるだけだ。それがもどかしくてそっと指先を掴んだら、なだめすかすように髪を撫でられてしまった。 「また出かけましょうね」 「うん」 「帰ったら電話しますから」 「うん」  返事はするものの一向に手を離さない僕に、藤堂は困ったように笑う。いまものすごく藤堂を困らせているのはわかっているのだが、その気持ちに反して身体が動かない。  一緒にいた時間が長くなるほどに、離れることが惜しくなるのだなと思った。これから先も僕は同じことを繰り返してしまうのだろうか。藤堂を困らせたいわけではないのに。 「佐樹さん」 「……」 「ここでキスはしてあげられないから我慢してくださいね」  優しい呼び声につられて顔を上げたら、耳元で柔らかな低音が囁きかける。その言葉で顔が思いきり紅潮した。 「違っ! そんなつもりじゃない」  慌てて手の甲で赤くなった顔を隠したら、また優しく髪を梳いて撫でられた。そして僕が掴んでいた指先もするりと抜けていく。

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