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第561話 決別 21-2

 さすがにいつまでもこんなことをしているわけにはいかないことを、藤堂に諭されたみたいで少し情けない気分になった。 「藤堂、色々とありがとうな」 「いえ、こちらこそ、連れて行ってくれてありがとうございます」  これ以上は引き止めて困らせるわけにはいかない。僕はまっすぐに藤堂を見つめて笑みを返した。そんな僕に藤堂はやんわりと目を細めて頬を撫でてくれる。 「あ、えっと、これ……大事にするから」  優しい眼差しに頬を熱くさせながら、僕は左手の薬指で光る指輪を撫でた。すると至極嬉しそうに藤堂は微笑んだ。その表情に胸を高鳴らせれば、そっと伸ばされた両手に左手を握られる。 「ありがとうございます」 「うん、じゃあ、そろそろ」 「そうですね」  やっとのことで紡いだ言葉に藤堂は小さく頷いて笑ってくれた。しかしその笑顔につられて笑った次の瞬間、心臓の辺りがひやりとした。 「さっちゃん?」  突然背後から呼びかけられた。聞き覚えのあり過ぎるその声に、心臓が驚きと焦りでものすごい勢いで鼓動を早めていく。ガチガチに固まった身体でその声をゆっくりと振り返れば、驚きをあらわにしてこちらを見ている母の姿があった。買い物帰りなのか両手に抱えたエコバッグが膨れている。 「……母、さん」  さすがに身内の登場に藤堂も慌てたのか、僕の手を握っていた両手が素早く離された。二人で身動きできずにいるそこに、母は駅の階段を下りてまっすぐ向かい近づいてくる。そして僕の目の前で立ち止まり、小さく首を傾げた。 「さっちゃん、昨日からお墓参りに行ってたのよね?」

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