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第565話 決別 22-2
「ちゃんとお母さんに話しなさい。優哉くんはお母さんになに一つ、嘘ついたことも誤魔化したこともないわよ」
「え? それって、どういう、こと?」
突然の言葉に頭がついていかない。それはどういう意味なんだろうか。藤堂は母になにかを話したのか?
訝しく思い藤堂に視線を向けると、彼は少し慌てた様子で母を見ていた。その横顔をじっと見つめたら、それに気づいた藤堂が僕の顔を見て困ったような表情を浮かべる。
「それはあとでいいから、さっちゃん!」
藤堂の表情も母の言葉も気になるが、急かすように大きな声を出されて思わず肩が跳ねた。僕は落ち着きのない気持ちをなだめながらゆっくりと母に向き合う。前を向けばまっすぐに母が僕を見つめていた。
「と、藤堂とは二か月くらい前から、付き合ってて……その、いつか紹介したい人がいるって言ったのも、藤堂のことで……でも、本当にちゃんといつか言おうって思ってて」
「いつかって、いつ言うつもりだったの?」
「それは」
問い詰められるような声に、言葉が全然浮かんでこなくて不安と焦りばかりが募る。緊張で喉がカラカラになって、思わずつばを飲み込んでしまう。両手をぎゅっと握って次の言葉を探した。
「あなたたち、男の子同士なんだから、結婚を前提にお付き合いすることになりました、なんて言えないのよ。いつかいつかって、タイミングを逃してましたとか言って、このままずっと黙ってるつもりだったんじゃないでしょうね」
「いや、そんなつもりは」
もう頭の中がパニック状態で、逃げ出したい気分になってきた。でも母の言っていることもあながち間違いではなくて、なにかのきっかけがなければ簡単に言い出せることではなかった。
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