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第566話 決別 22-3

 僕たちの関係は世間一般から見たら、普通ではないと言われることもあるだろう。それを母や姉たちにだって容易く言やしないことぐらいわかっていた。  ぐるぐると空回る思考に自分の気持ちがわからなくなってしまいそうで、心が苦しくなってくる。しかしふいに左手にぬくもりを感じると、不思議なくらい心が軽くなったような気がした。重ねられたその手の先をじっと見つめて、僕は俯いていた顔を前に向ける。 「藤堂は、まだ学生だし、未成年だから、せめて学校卒業するまで待ってそれから考えるつもりだった」  この言葉に嘘はない。いつ話すかと考えれば、やはり教師と生徒である立場上いまは無理だと思っていた。中身がいくら大人でも未成年と付き合っていますとは、そう簡単には言ない。 「優哉くんまだ成人していなかったの? いまいくつ?」  やはり大学生くらいに思われていたんだろうか、僕の言葉に母は首を傾げて藤堂を見つめた。その視線に藤堂は苦笑いを浮かべて口を開く。 「いま十八です」 「……え? ええっ?」  藤堂が口にした年齢に驚きの声を上げたのは母ではない――この僕だ。驚きのあまり勢いよく藤堂を振り返り、僕はその顔をまじまじと見つめてしまった。僕の戸惑いに藤堂は困った顔をして笑う。 「待った、いつ十八になったんだ」  今年の三月に三十二になった僕と、藤堂は十五歳離れているはずだった。それがいつの間に一つ、年の差が縮まっていたんだ。 「昨日です」 「は? 昨日? ……嘘だろ」  返って来た答えに思わず両手で頭を抱えて俯いてしまった。よりにもよって昨日とかって、ありえない。

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