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第568話 決別 23-1

 あまりにもあっけらかんとした母の言葉に呆気にとられてしまった。いや、反対されたかったわけではないし、むしろ母にはちゃんと認めてもらいたいと思っていたから、結果的には問題ないのだが。あまりにもあっさりとし過ぎてどう反応していいのかわからない。それに先ほどまでの会話で気になることがまだ一つ解決されていない。 「母さん、もしかしてこのこと知ってたの?」 「知ってたわよ」  僕の問いかけに、これまたあっさりとした答えが返って来た。それには驚いてしまったが、それと同時に僕は隣に座っている藤堂にも視線を向ける。母は自分に藤堂は一言も嘘や誤魔化しを言ったことがないと言った。解決されていないのはその言葉の意味だ。 「藤堂が言ったのか?」  二人の関係について僕は言っていないのだから、ほかに母に言うとしたら藤堂しかいない。けれど藤堂は困惑した表情を浮かべるだけで返事をしない。 「それは違うわ。優哉くんは一言も、さっちゃんと付き合ってるなんて言ってないから」 「じゃあ、なんで? いつから!」  なんだか全然話が噛み合わなくて、まったく意味がわからない。八つ当たり気味に大きな声を出せば、母に大きなため息をつかれてしまった。でも僕だけ状況をまったく理解できていないのがもどかしくて、苛立たしくなってしまう。 「最初からよ」 「え?」 「優哉くんが向こうのおうちに初めて来た日からよ」  まっすぐと告げられた思いがけない言葉に、一瞬だけ時が止まった気がした。それを飲み込むまでに数秒要して、ようやく頭の中で理解すると疑問符か浮かぶ。

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