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第569話 決別 23-2

「どうして気づいたんだ」 「あの夜、二人がリビングで話をしているの、聞いちゃったのよ」 「……あ」  母の言うその出来事はすぐに思い出した。それはあの時だ。明良と佳奈姉に巻き込まれて藤堂がお酒を飲んでいて、そのあとに二人がいなくなって、ちょっとしたすれ違いで藤堂と揉めた、あの時だ。あのやり取りを母に聞かれていたのか。話の内容もそうだが、そんなに初めからだったなんて、今更どんな顔をしたらいいのかわからなくなってくる。 「なんで、なにも言わなかったんだ。嫌じゃなかった?」  いきなり実家に連れてきた男が、自分の息子の恋人だなんて知ったらどんな思いをするだろうか。もし僕が親だとしたら絶対に驚くのは間違いない。明良のおかげで僕自身は偏見を持つことはないけれど、でも、自分の子供だったら?  本当にそう思えるだろうか。少なからずショックを受けたりするんじゃないだろうか。絶対と言える保証はない気がしてきた。 「それはもうその時はびっくりしたわよ。びっくりし過ぎて夜も眠れないくらいだったわ。でもね、優哉くんがすごくいい子だったから」 「それだけで?」  藤堂のことは本当に母は気に入っている様子ではあったけれど、それとこれはやはり別問題な気がする。息子のただの男友達ならば、いい子だからね、で済むかもしれない。でも実際はそうじゃない。昔から異性としか交際したことのなかったはずの息子が、突然選んだ同性の恋人だ。 「まさか、それだけじゃわからないから」 「だから連絡先、聞いたりしたんだ」

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