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第570話 決別 23-3

 なんだかいまになって色んなことが繋がって、わかってしまった。藤堂の連絡先を聞いて、藤堂がどんな人物なのか探りを入れようと思ったんだ。そうでなければ母が勝手に僕の知らないところで、僕の友達の連絡先を聞くことはないはずだ。いや、いままで一度だってそんなことはなかった。 「そうよ。だけど聞いて失敗しちゃったと思ったわ」 「なんで」 「想像しているよりもずっと、優哉くんがさっちゃんのこと大好きだってわかっちゃったから、逆に辛くなっちゃった」  最後の一言に、胸が押しつぶされそうなくらい痛くなった。やはりそんなに簡単に受け入れられることではないんだと、改めて思い知らされる。そして母に少しでも辛いと思わせてしまったことが申し訳なかった。でもそれでも、それを知ったいまでも、藤堂と別れる気にはなれない。 「母さん、ごめん。でも無理だよ、藤堂と離れるのは無理だ」 「優哉くんにはすごく大事な人がいて、その人とお付き合いできることがすごく嬉しくて、その人のことを考えているだけで幸せなんだっていつも言ってた」  僕の言葉を遮るように母は言葉を紡いだ。その言葉に僕は胸が苦しくなる。 「優哉くん、お母さんが聞くことにはなんでも答えてくれたわ。なにも知らないふりをしていてくれたけど、本当は、気づいてたのよね。自分たちのことが知られてるってことに」 「……」  僕を見ていた母の視線がすっと藤堂のほうへと向けられる。なにも答えないけれど、まっすぐに母を見つめ返すその視線が、その答えを物語っている気がした。だから藤堂は母が現れてこんなことになったのに、僕よりもずっと落ち着いていたんだ。

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