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第572話 決別 24-1
ボロボロとこぼれ落ちる涙は、両手で拭っても拭っても止まらなくて。藤堂の右手を強く掴んだら、やんわりと握った手を解いて肩を抱き寄せてくれた。あやすように優しく髪を撫でてくれる手にすり寄り、僕はいまだ止まらない涙をこぼした。
「さっちゃんが、そんな風に泣くのは初めて見たわ。いっつも歯を食いしばって泣いてる顔なんて見せない子だったのにね。きっと優哉くんの傍が一番安心できるのね」
そういえば藤堂以外の人前でこんな風に泣くのは初めてだ。僕は意地っ張りだから、昔から弱さを見せるのが苦手だった。けれどそれを母が気にかけてくれていたのは知っている。いつかため込んだものがあふれて壊れてしまわないかと、心配をしてくれていた。
藤堂と一緒にいるようになって僕はどんどん変わっているような気がする。いままでの自分が塗り替えられて、知らなかった自分に驚いてしまう。自分という人間を改めて知って、少しずつ成長しているのだろうか。
そうだったらいい。藤堂といることがプラスになるほど、僕たちの結びつきは強くなる。一緒にいることが無意味ではないと思える。
「俺は、多分きっとあなたには、まだ本当の意味で心を許してもらえていないんじゃないかと思っています」
「……」
「正直言って、俺はまだ子供で、なんの力もないです。幸せにしてみせますとか、守りますとか容易くは言えない。それでも、なにもなくても、この人の手を離さないことだけはできると思っています。俺はこの人を大切にしたい。だからいつかあなたに認めてもらいたいです」
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