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第586話 夏日 4-1

 自分の名前を言い当てられたのが予想外だったのか、月島は驚いた表情を浮かべたままあずみを見つめる。少しだけ警戒の色を見せたその反応に、あずみは慌てたように声を上げた。 「西岡先生からお話は聞いてます! えっと、私、写真部の部長してる片平あずみって言います。で、こっちも部員の三島弥彦」 「あ、そうなんだ。ふぅん、そっか。佐樹ちゃんが俺のこと話してるってことは、君たちも佐樹ちゃんと 親しいんだね」 「秘密厳守してますっ」  至極嬉しそうに笑みを浮かべながら、あずみは人差し指を唇に当てて片目をつむった。そんなあずみの姿に月島はふっと微笑むと、上着の内側に手を差し込んだ。 「佐樹ちゃんのお墨付きなら、いいか。月島渉です。よろしくね」  胸元から取り出したカードケースから名刺を抜くと、月島はそれをあずみと弥彦に手渡した。 「ありがとうございます」 「あ、じゃあ私も」  頭を下げた弥彦の隣であずみは慌ただしく鞄を開くと、ラインストーンで煌く名刺入れを取り出した。そして自分の電話番号やメールアドレスが印刷された名刺を月島に差し出す。さすがにこの展開は想像していなかったのだろう。月島は目を丸くしてその名刺を見つめている。 「あ、ご迷惑でしたか?」 「いや、ううん。ありがとう。でもよく知らない男にこんな名刺渡していいの?」  様子を窺うように見つめるあずみの視線に、月島は声を上げて笑い差し出された名刺を受け取った。 「大丈夫です。月島さんは西岡先生のお友達だって聞いてるし、西岡先生は私の信用できる大人の三本の指に入ってますっ」 「あはは、そうなんだ。さすが佐樹ちゃんだね」

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