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第591話 夏日 5-1
夏らしい入道雲が真っ青な空に浮かぶ。八月になり毎日うだるような暑さが続くが、バテている暇もなくなにかと仕事が忙しい。ここ数年こんなに忙しかったことなんかなかったのにと思ったが、ふと我に返った。そういえばここ数年の自分は学校に出勤しているものの、ほとんどの時間を準備室で過ごし、用事がある時にしか出てこないような有様だった。
「職場で引きこもりとか、今更だけどタチ悪いな」
けれど最近は職員室にいる時間も増えたし、ほかの先生たちと会話をする機会も増えた。元々、社交性がなかったわけではないから、なんとなく互いの間にあった溝がなくなると、あとはもう大人同士あっさりとしたものだ。いまでは遠慮なく用事を頼まれるし、あれこれと手伝わされたりもする。
そうか、だからいまこんなに慌ただしいのかと、改めて納得してしまった。
「西岡先生もうそれが済んだらいいですよ」
「あ、わかった」
遠くからかけられた声に返事をすると、僕は廊下の掲示板に貼られていたポスターを剥がし、手元にある最後の一枚を新しく貼り直した。
「生徒総会かぁ、いよいよ夏休みが終われば生徒会も入れ替え時期だな」
新しく貼ったポスターは九月に行われる生徒総会と、生徒会選挙開催お知らせのポスターだ。
「よぉ、センセご苦労さん」
「暑いから抱きつくな」
背後に感じた気配にさっと身体を横にずらすと、いままで自分がいたところで大きな手が空を切っていた。
「ケチだな、挨拶だろ」
「お前はいつから挨拶が欧米化したんだ」
まためげずに寄ってくる峰岸をそれとなく避けながら、剥がしたポスターをまとめて歩き出すと、ぶつくさと文句を言いながらも峰岸は僕のあとをついてくる。
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