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第628話 夏日 14-2
けれど言葉が続かなくて、向かい側で首を傾げる藤堂は、呼びかけた僕の言葉を待ち目を瞬かせている。
「あ、えっと……明後日、土曜日にあるだろ」
少しばかりしどろもどろになりながら、やっとのことで言葉を紡ぐ。しかし藤堂はその先をすぐに悟ったらしく、ふっと優しく微笑みを浮かべた。
「その日は休みをもらいました。なので最後まで一緒にいられます」
「そ、そうなのか」
返って来た言葉に思わず顔が緩んでしまうくらいに気持ちが浮ついた。明後日の土曜日は写真部の校外部活動の日だ。バイトで忙しい藤堂だから、途中で帰ってしまうだろうと思っていた。それなのにずっと一緒にいられるとは予想外過ぎて、嬉しくて仕方がない。
しかも来週の水曜日には二人で実家へ行くことになっている。それはほとんど間を置かずに藤堂と一緒にいられる時間が続くということだ。
「でもなんで行くことになってたんだ?」
会えることが嬉し過ぎて深く考えていなかったが、ふと疑問が浮かぶ。比較的自由な部活だが、部外者が同行するのは大丈夫なのだろうか。しかしそういえば峰岸が電話をかけた時点で予定は決まっていたようだった。
「あー、それはあずみと弥彦が」
首を傾げた僕に藤堂は困ったように笑って言葉を濁す。けれどますます疑問符を浮かべて見つめる僕に根負けしたのか、少し大げさに息を吐いた。
「夏休み前にあの人、佐樹さんを訪ねて学校に来たでしょう?」
「ん、あの人? あ、もしかして渉さん? 会ったのか?」
「えぇ、その時にあずみと弥彦もいたんですけど、ちょっとまあ、その時に色々あって。あの人と佐樹さんの関係とか色々と突っ込んで聞かれる羽目になったんです」
その時のことを思い出したのか、ひどく苦い表情を浮かべて藤堂は肩をすくめる。
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