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第629話 夏日 14-3
三島はともかく、あの片平だ。かなり強引に追求されたのだろう。あまりにも簡単に想像できてしまうその状況を思い、僕も思わず苦笑してしまった。
「それで、どうせほかにも部員以外の人間は来るから、絶対来いと」
「え? 部員以外も来るのか?」
「被写体とか、そういう名目で来るみたいです。当日にならないと何人になるのかわからないってあずみがぼやいてました」
その話はまったく聞いていなかった。写真部は部員だけでも十四、五人いたはずだ。それにプラスされて人が集まるとなると、当日はかなり気合い入れていかないとまとめるのが大変そうだ。部長である片平も気苦労が絶えないだろう。
「賑やかになりそうだな」
「ほんとですね」
当日のことを想像して僕と藤堂は顔を見合わせると、楽しみと心配を織り交ぜた複雑な表情を浮かべて笑いあった。
「でも佐樹さんと一緒にいられる時間が増えて嬉しいです」
「……えっ」
不意打ちで告げられたまっすぐな言葉と、小さく首を傾け満面の笑みを浮かべた藤堂の表情に、うろたえて椅子から転げ落ちそうになった。そんな挙動不審な僕を見つめながら、藤堂は笑みを浮かべて再びこちらへやって来る。
そして気恥ずかしさのあまり立ち上がって後ずさりしそうになった僕に腕を伸ばし、力強く引き寄せて身体を包み込むように抱きしめてくれた。身体に感じるぬくもりに少しばかり胸の音が早くなる。それでも僕は藤堂の背中に腕を回し抱きしめ返した。
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