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第633話 夏日 15-3
「えっと、初めまして西岡佐樹です」
「どうも」
ぽつりと短い返事だけが返ってきてどうしたものかと戸惑ってしまう。歳はまだ若そうに見える。二十代半ばくらいだろうか。黒髪の短髪で、ほんの少し日焼けをした身体もしっかりしているし、体育会系な印象。横顔から見える顔立ちは凛々しくて、目鼻立ちがはっきりした和が似合いそうな雰囲気。しかもすごい男前だ。
「瀬名です」
「あ、ありがとう」
戸惑っている僕を察してくれたのか、彼は僕に名刺を差し出してくれた。
「瀬名、基さん。これではじめって読むんだね。えっと制作会社ってことは渉さんの仕事関係?」
「瀬名でいいっすよ。俺のほうが年下なんで。渉さんとは仕事の付き合いです」
「あー、じゃあ瀬名くん。よろしく」
なんとなく話しにくそうにぽつりぽつりと話す瀬名くんに首を傾げながらも笑みを返すと、ひどく困ったような顔をされてしまった。
「瀬ー名ーくーん。早く車出して、時間に遅れるから」
急かすように運転席のシートを後ろから遠慮なく叩く渉さんに、瀬名くんは「了解です」と呟くとエンジンをかけて車を発進させた。そして車は快調に走り、窓からの景色もどんどんと姿を変えていく。
「仕事以外で出かけるのってすっごい久しぶりかも」
ドアに肘を突きながら外を眺めていた渉さんがぽつりと呟く。その声に振り返ると、眩しそうに外を眺めながらも、口元に笑みを浮かべた横顔があった。
「渉さん忙しいのに無理聞いてもらって、ほんと助かった。今日は息抜きのつもりで参加してくれていいから」
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