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第635話 夏日 16-1

 車で一時間ほど、電車なら二時間弱だろうか。今日の目的地、自然森林公園に到着した。駐車スペースに車を停めて降りると、入り口付近に写真部の生徒たちの姿が見える。その中の一人、片平が僕らに気がついて走り寄ってきた。 「西岡先生おはよう!」 「ああ、おはよう」 「月島さんもおはようございます。今日はよろしくお願いします!」 「うん、よろしくねぇ」  深々と頭を下げた片平に渉さんは微笑ましげに目を細めていた。 「あ、えっと」  顔を上げた片平が運転席から出てきた瀬名くんを見て首を傾げる。黙々とトランクから荷物を取り出しこちらには目もくれない彼に、さすがの片平も戸惑っているようだ。 「あ、あれは荷物持ちくん」  目を瞬かせる片平の視線に、渉さんは僕に紹介したのとまったく同じ答えを返す。 「片平、彼は瀬名くん。渉さんの仕事関係の知り合いだって」 「そうなんだ。瀬名さーん、よろしくお願いしまぁす!」  離れた場所にいる瀬名くんに向かって片手をぶんぶんと振って、片平は大きな声で挨拶をする。そしてその声に少し驚きながら顔を持ち上げた瀬名くんは小さく頭を下げた。 「あ、あのね先生」 「ん?」 「部員と部外のメンバーは揃ったんだけど、北条先生が遅れてて。もう少しで着くとはメール来たんだけど、どうしよう」 「北条先生まだなのか」  腕時計に視線を落とすともうすぐで九時になる。今日、部活動を行う自然森林公園の入園時間は九時からだ。まだ遅くなるようであれば先に生徒たちだけでも中に入れてしまってもいいが、どうしたらいいだろうか。

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