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第636話 夏日 16-2

 しかし片平と二人、顔を見合わせて思案していると、勢いよく走ってきた白い車がすぐ傍の駐車スペースに急停車した。その勢いに驚いて目を丸くすれば、後部座席から慌ただしく北条先生が顔を出した。 「やあ、すいません。学校に必要なものを忘れて取りに行っていたら時間を食ってしまって」 「え?」  大きな鞄とカメラをぶら下げた北条先生の急な登場にも驚いたが、僕と片平は反対側の後部座席から現れた人物のほうにひどく驚いた。驚きに目を見開く僕の隣で、片平の顔がものすごい険しいものになっていく。 「なんであんたがいるのよー!」  叫び声にも似た片平の声に、その人物はのんきに手を挙げひらひらと振ってみせる。そして機嫌のよさげな笑みを浮かべてこちらまで来ると、呆然としている僕を遠慮もなく抱きしめた。 「センセ、おはよ。今日も可愛いな」 「み、峰岸。なんで」 「ん? だってなんか面白そうだろ、今日」  僕の肩に手を置いたまま腕を伸ばし、戸惑っている僕の顔を至極楽しそうに見ると、峰岸は満面の笑みを浮かべた。  その笑顔は陽射しを受けてかなり眩しいほどだ。藤堂もそうだが、やはり峰岸も私服になると高校生らしさがない。というか微塵もない。VネックのTシャツに細身のデニムにスニーカー。シンプルないでたちなのに、なぜこうも目立つんだ。 「す、すみません」 「え?」  存在感のあり過ぎる峰岸に隠れて気がつかなかったが、後ろには申し訳なさそうに小さくなっている間宮の姿があった。後部座席に北条先生に峰岸、となると運転手はコイツか。

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