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第649話 夏日 19-3

「うん、いい画が撮れた」  僕らの子供じみたやり取りをずっとカメラで追っていた片平が機嫌よさげに頷いた。そんな片平の手元を覗き込めば、彼女は画面を操作していくつもの画像を見せてくれた。そういえばこうしてじっくりと片平の写真を見るのは初めてだ。  素人目ではあるけれど、彼女の視点はなんとなく渉さんに似たようなものを感じる。なに気ない瞬間が鮮明で目を惹かずにはいられない。そんな優しい光と眩しいほどの笑顔がそこにはたくさん写し撮られていた。 「ああ、いいな。すごく」 「先生と優哉が写ってるのは全部プリントアウトしてあげるからね」 「ん、ありがとう」  僕の言葉に嬉しそうな笑みを浮かべながら顔を上げた片平。そんな彼女の頭を、気づけば僕は自然と撫でていた。そしてそういえば渉さんも片平の頭を撫でていたなと、ふいに思い出す。  基本的に女性には自分から近寄らない人だったのに珍しいなとその時は思った。けれどそういう括りを感じさせない、片平のまっすぐな純粋さに好感を抱いたのかもしれないなと、彼女の写真を見て改めて感じた。 「あ、もうこんな時間」  急に鳴り出した音に肩を跳ね上げた片平は、鞄のポケットからその音の主である携帯電話を取り出しアラームを止めた。 「そろそろお昼だから集合かけなきゃ」  いまの時代は便利になったものだ。携帯電話のメッセンジャーアプリで、グループ設定をした相手に瞬時に用件を伝えられる。携帯電話を操作していた片平が顔を上げると、もれなく僕らの携帯電話が受信音を響かせた。  お昼の招集をかけられた生徒たちが集合場所に集まると、片平から午後のスケジュールを簡単に伝えられた。帰りの移動時間も考慮して午後は十六時に集合、十六時半には撤収ということらしい。そしてスケジュールの最終確認が終われば、生徒たちは各々の弁当を持ってまたあちこちへ散っていった。 「マミちゃん、お昼用意してないでしょ? こっちで食べていきなよ」  木製の広いテーブルにクロスを広げ、昼食の準備をしていた片平が、所在無げにしていた間宮を振り返った。

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