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第650話 夏日 19-4

 午前中は間宮と一緒にいた北条先生だったが、昼食を渉さんと同じ席で取るのはおこがましくて仕方がないからと、ほかの生徒たちと一緒に行ってしまった。間宮もそちらへついて行くかと思いきや、先ほどから僕の近くをウロウロしている。学校での癖が外でも抜けないのだろうか。 「すみません」 「いいのいいの、どうせどっかの誰かさんが強引なことして急に巻き込まれたんでしょ。それにお弁当は余るの覚悟でかなりたくさん用意してきたし、遠慮なく食べってって」  申し訳なさそうに頭を下げた間宮に笑みを浮かべた片平。しかし彼女は我関せずな様子で、三島や藤堂が手にした重箱を覗いている峰岸を横目で睨んだ。 「あんたの分はないからっ」 「これほとんど藤堂と三島が作っただろ。片平は切るかちぎるかしかしてないぜ絶対」 「う、うるさいわね。おにぎりは握ったわよ」  テーブルの上に広げられた重箱には、惣菜やサンドイッチやおにぎりなどが本当にたくさん詰め込まれていた。藤堂の言っていた準備とはこのことだったのか。僕や渉さんたちは昼の準備をして来なくていいと言われてはいたけれど、これだけの量となるとかなり朝早くから準備していたに違いない。 「あー、わかった。この三角だか丸だかわかんねぇ、いびつなのが片平で、この綺麗な三角が藤堂だな。んで、藤堂のと似て綺麗な形してっけどちょっとほかより大きいのが三島のだ」  木製ベンチに跨がり、重箱のおにぎりを眺めていた峰岸が片平を見てにやりと笑った。その表情に片平はムッと口を曲げて怒りをあらわにする。 「藤堂と三島なら味は変わんねぇからこのデカイのいただき」 「ムカつくっ、塩むすびだから味は変わんないわよっ」 「バーカ、塩むすびならなおさらだ。塩加減ってもんがあるんだぜあずみちゃん」 「食べるなーっ」  片平に背中を勢い任せに叩かれながらも、にやにやと笑い峰岸はおにぎりに齧り付いた。

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