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第651話 夏日 20-1
相変わらず峰岸の愛情表現は捻くれまくっている。気に入った相手をからかったり、いじめたり、それはまるで小学生のようだ。
「なぁんか、可愛いね。ほのぼのする」
二人のじゃれあいを見ながら彼らの向かい側に座ると、のんびり近づいてきた渉さんがベンチを跨ぎ越して僕の隣に並んで座った。そしてそのさらに隣には相変わらず無口な瀬名くんが座る。
「みんな裏表なくって、癒やされる」
テーブルに頬杖をついて、渉さんは眩しそうに目を細めた。
「ほら、あっちゃん落ち着いて。とりあえずご飯にしよう」
毛を逆立てた子猫のような片平を宥めすかして、峰岸から引き離すと三島は片平を僕の隣に座らせた。
木製ベンチはテーブルが大きいこともあって四人ゆったり座れる大きさだ。片平の前には三島、僕の前には藤堂、その隣には間宮が座った。峰岸はというと、三島と藤堂のあいだでベンチを跨いだままだ。しかも藤堂に背中を向けて若干もたれかかっている状態。重たくて邪魔だから前を向くか、端に座れという藤堂の言葉も笑って受け流している。
「唐揚げうめぇ」
「西やんもほかのみんなもどんどん食べちゃって、このままだと峰岸の胃袋に飲み込まれる」
誰よりも遠慮なくあれこれ指でつまみ食べている峰岸に呆れながらも、三島は僕らに紙皿や割り箸を配っていく。そしてそれと同時に、皆一斉にいただきますを合図にして重箱へ箸を伸ばした。
「あ、すごい美味しいですね」
「うん、これは美味しいねぇ」
みんな料理を口にする度に至極幸せそうな笑みを浮かべる。色々と食べていくと、どの惣菜が藤堂で、どれが三島なのかはすぐにわかったが、みんなが言うようにどれも本当にすごく美味しい。そして美味しいものを食べると人間和やかになる。たわいない会話や写真の話などをして場はとても盛り上がっていった。
けれどふいに峰岸と藤堂のやり取りが目に入って、思わず箸が止まってしまう。
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