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第659話 夏日 22-1

 昼休憩が終わると月島はすぐさま俺と峰岸を捕まえてカメラを手にした。乗り気ではないのが思いきり顔に出ている俺とは違い、峰岸はさして気にもせず月島について行く。その少し後ろを瀬名という男が大きな鞄を肩にかけついて歩く。食事の時もほとんど口を開くことなく、かなり無口な印象を受けたが、視線の先はわかりやすいくらい見て取れた。顔ばかりよくて性格に難があり過ぎるだろう月島のどこがいいのかが謎だ。 「あー、一真はそのままでいいけど、優哉はこれちょっと預かるね。ん、やっぱそんなに度は強くないねぇ。なくても見えるよね?」  苗字は覚えるのが苦手だと、遠慮も了承もなくさらりと人の名前を呼ぶ月島に眉をひそめると、至極楽しげに笑いながら月島は俺の眼鏡を取り上げた。そしてさらに無遠慮に人の髪をかき乱す。 「瀬名くん、これ傷つかないようにしまっておいて」  俺の眼鏡を受け取った瀬名は、無言のままそれを薄い布に包み小さな箱へと入れた。そして鞄からノートパソコンを取り出し、なにやら黙々と作業を始める。月島はカメラ調整をしながら時折こちらにそれを向けるが、まだ撮影を始める様子はない。 「あれ、なんか北条先生がめちゃくちゃこっち見てるけど、センセどうしたんだろうな?」 「ん?」  ふいに肩に重みを感じて振り返ると、峰岸が人の肩に腕を乗せて遠くを見つめていた。それにつられて視線を流せば、その先に慌てた様子で北条に話しかけている佐樹さんの姿がある。月島のファンであると言っていた北条だから、好奇心と興味でこちらを見ているのだろう。しかしふいに俺は学校で鉢合わせた時のことを思い出した。 「そういえばあの時」  私服で裸眼だったので学校に訪問した客だと勘違いされたが、いままさに同じ状況だ。

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