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第660話 夏日 22-2

 佐樹さんの様子を見れば、間近ではないので気になっている程度の認識なのかもしれない。けれど気づかれるのは面倒くさいなと思った。とはいえあの時なにをしていたかまで見られてはいないので、あまり気にするのはやめておこうとも思った。 「お、今度はマミちゃんが急接近」  実況中継のように耳元で話されて少し苛ついている俺などお構いなしに、峰岸は楽しそうな声で俺の心情を煽る。  午後の荷物番は北条なので佐樹さんはあそこにいなくてもいいはずなのにと、余計な苛つきまでも加わり、自分でもわかるほどに表情が抜け落ちそうになった。北条への誤魔化しでカメラ談義でも始めたのか、佐樹さんは北条のカメラを見ながら笑みを浮かべている。その隣にちゃっかりと間宮がくっついていた。 「おっと、ツーショットで記念撮影とはやるなマミちゃん」 「うるさいっ」  カメラを持った北条に間宮がなにか話しかけた。するとそれに応えた北条が佐樹さんの肩を叩き間宮に身体を寄せさせた。無邪気に笑いながらほかの男と写真を撮っている彼に身勝手な怒りを覚えてしまう。 「こらこら、そこ。そんな恐ろしい顔しない。あとで俺がちゃんと二人っきりで写真撮ってあげるよ」  ため息と一緒に吐き出された月島の言葉は呆れを含んだものだった。そんな声を不機嫌なまま聞き流し、俺はこれ以上の苛つきを感じないように佐樹さんから視線を離した。 「独占欲むき出し、若いっていいねぇ。とりあえず撮っていくから、そのまま話しながらでいいよ。たまにこっちに視線頂戴」  小さな月島の笑い声に少しばかりの羞恥を覚えた。そしてムッと口を引き結ぶと峰岸がまたなだめるように背中を叩く。 「なぁ、あの二人ってどう思う?」 「あの二人?」

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