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第661話 夏日 22-3

 ふいに耳元で囁かれて視線を持ち上げる。峰岸の言うあの二人とは恐らく月島と瀬名のことだろう。その問いかけに俺はほんの少し悩んだが肩をすくめた。 「思いきり一方通行だろ」 「あ、やっぱそうか。だよなぁ」  苦笑する峰岸は瀬名を見つめ肩をすくめた。追いかける瀬名の視線は本当にわかりやすく、隠す素振りもない。けれどそれに対して月島は受け止めることなくすべて受け流していた。こうして近くに置いているということは少なからず信用しているのだろうが、どう見ても相手の気持ちを受け止めようという気配は見当たらない。 「なにが駄目なんだろうな」 「あれはどう考えてもどっちもタチだ。月島が逆になったなんて話は聞いたことないし、相手の瀬名ってやつは恐らくノンケだろう。そういう面倒くさいやつを月島が相手にするとは思えない。それよりもお前なんでそうやって、見込みないところへ突き進んでいこうとするんだ。人のものだろ」 「いま一方通行って言っただろ。まだ人のものじゃない」  興味の対象が俺たちから離れることはいいことだが、報われないところへ進んでいくのはあまり見たくない。 「なんでそんなに恋愛の選択肢が多いくせに、届かないものに手を伸ばすんだ。あずみだって無理だろ」 「……なんだ気づいてたのか」  ほんの少しだけ驚きに目を見開いたが、峰岸はすぐに小さく笑ってそれを誤魔化した。 「無理なのはわかってる。でも欲しいなって思うだけなら別にいいだろ? 俺はどうこうなりたいって思ってねぇし、好きな奴に泣かれるのが一番嫌なんだよ」  この男は恋愛にとことん自由だ。誰かを好きになることは当たり前の感情で、それを隠しもしない。けれど恋愛にとことん不器用な男だ。

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