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第665話 夏日 23-3
俺も人のことは言えたものではないが、それでもこの二人の心はあまりにも寂しい色が揺らめいて見える。自分にも、そして相手にも与えてしまうかもしれない心の傷と痛みが怖くて、本当に本気になったものを手にできないのだ。臆病で優し過ぎて、脆くて不器用にもほどがある。
「安心しろ。いまの一番はお前とセンセだ」
「それがこじれてるって言ってるんだよ」
子供みたいに無邪気な顔で笑みを返す峰岸に俺は呆れ顔でため息をつく。けれど当の本人はまったく意に介さない。それどころか呆れる俺をよそに月島と連絡先を交換し始めた。
「渉って呼んでもいいか? さんって言いにくい」
「うん、一真なら別に構わないよ」
お互いがお互いの安全牌と認識し合ったのだろう。今日会ったばかりとは思えないほどに距離を感じさせない。峰岸のオープンさと月島の持つ雰囲気は、本人たちが言うようによく似ているのかもしれないと、肩をすくめながら再びため息をついてしまった。しかしそんな二人を見つめる視線には別の意味でため息が出る。
「そんなにのんびり構えてていいんですか」
「……いまここで、割り入ってもなんのメリットもない。逆に毛を逆なでするだけだ」
ため息と俺の視線を感じたのか、瀬名は再びパソコンに視線を落とした。気にはなるけれど、月島の感情に踏み入る気はないということだろうか。正直、峰岸に似た性格なのであれば、月島という男は捉えどころのない性格の持ち主だろう。うまく人の感情を読み取り、それに合わせた人格を表に出す。本音はよほどのことがない限り表には出さない。
「ずっと見てるだけですか」
けれど本気でどうにかしたいのであれば、いつまでも見ているだけではなにも変わらない。ああいうタイプの人間は懐かないのであれば、多少の無理をしてでも捕まえなければ、どうしたって手にすることはできないだろう。
「野生で生きてる手負いの生き物にいきなり手を出しても、牙を剥かれて噛み付かれるだけだ」
「確かに、下手をすれば一生懐く機会も得られなくなるでしょうね」
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