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第669話 夏日 24-3

 首を傾げている佐樹さんに向かいカメラを構えた月島は、合図をするでもなくシャッターを切る。それにほんの少し驚いた表情を浮かべた佐樹さんは、おもむろに立ち上がってなぜか俺をじっと見つめた。それを不思議に思い小さく首を傾げ笑みを返すと、急にふわりと柔らかな笑みを浮かべる。  なに気ないその表情が可愛くて、思わず抱きしめたい衝動に駆られた。けれどそれをどうにか心に押し留めて、じっとその笑みを見つめ返した。 「はぁ、相変わらずラブラブだね。さすがにちょっと嫉妬するな」  ずっとカメラのシャッターを切っていた月島がふいにカメラから視線を外すと、呆れたように肩をすくめる。けれどそれと同時か、急に響いた「え?」っという驚き上擦った声にその場にいる皆が振り返った。 「なに、いまの疑問系。俺が敗北した相手がこの男だってことがそんなに意外?」  声を発した瀬名は驚きに目を見開いて俺と佐樹さんを見ていた。そんな瀬名を月島は遠慮の欠片もなく膝で背中を思いきり小突く。そしてその膝の打撃に我に返ったのか、瀬名は不機嫌そうに眉をひそめ目を細める月島を見上げた。 「いや、そうじゃなくって。そっちのとデキてんのかと思ってた」  俺に視線を向けたかと思えば、瀬名は視線を流し峰岸を見つめる。けれどそんな視線に峰岸は吹き出すように笑い、月島に至っては呆れ返ったように白い目で瀬名を見下ろしていた。 「馬鹿じゃないの。どんだけその目は節穴なのさ」 「まさかこんなに年離れてると思わないじゃないっすか。そこの二人が高校生ってだけでもまだ信じがたいのに、まさか西岡さんの相手が高校生だとは思わないっすよ」 「声でかいしうるさい。ああ、そうですよ。こんな若造に持って行かれたんだよ、俺は」  機嫌を損なった様子の月島はしつこいくらいに瀬名の背中を小突き回す。

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