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第674話 夏日 25-4

「そういえば、写真部のその展覧会はいつなんだ?」  カメラを手にして満面の笑みを浮かべるあずみに、佐樹さんはゆっくりと近づいていく。その気配を察して顔を上げたあずみはほんの少し考える素振りをしてから、彼の目を見つめ返した。 「来月の半ばくらいからだったはず。来客や各校の先生方なんかの得票が多いと全国で展示されるから、最後の三年は毎年気合い入るのよね。いつもうちの高校は予選敗退だから余計力が入るわけ」 「片平は写真の専門に進むのか?」 「そのつもり。だからちょっとは箔を付けておきたいのよね」 「そうか、そうするとお前たちみんな、それぞれの道歩いていくんだよな。半年とかなんてあっという間なんだろうな」  ガッツポーズして片目をつむったあずみに、佐樹さんはふっと目を細めて笑った。  もう八月も終わりが近い。夏休みが終われば生徒総会や体育祭、文化祭などが立て続いて行われる。行事ごとが終われば三年はもう進学や就職に向けて一直線だ。そんな風景を想像して、きっと少し寂しさを感じたのだろう。優しげな瞳にはこれから先の平穏を願う慈愛の光が浮かんでいるが、どことなく切なさを感じさせる色も含んでいた。 「じゃあ、まだ少し時間あるし、のんびり反対側も回ってから広場に戻ろう」  時計を確認してカメラを首から提げると、あずみは三脚を片付ける弥彦を見上げた。その視線に応え了承した弥彦は鞄から地図を取り出して、現在地を確認すると指先で地図をなぞっていく。来た道とは違う、広場へ戻る道順だ。 「帰り道もじゃんじゃん写真撮っていくわよ!」  気合いの入ったあずみの声に若干気圧され気味の弥彦と峰岸は、ふと顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。  そんなやり取りをじっと見つめる佐樹さんの視線にほんの少し胸が痛くなった。俺たちが卒業してしまえば彼はまた一人になる。

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