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第678話 夏日 26-3

「とりあえず十六時になったら全員に連絡するわ。北条先生は集合写真の用意をお願いしますね」 「はいはい。うちは部長がしっかりしてるから助かるな」  北条は間宮に視線を少し向けてからノートパソコンを閉じると、それを鞄にしまい別の大きな鞄からカメラと三脚を取り出した。今日の校外部活動の最後は全員の点呼を取り、全員で集合写真を撮ったら終わりだ。  あとはそれぞれで帰宅するのだが、どうやら帰りは参加者のほとんどが集まって打ち上げをするらしい。しかしそれに俺が同席するわけがなく、最初にあずみに声をかけられた時点で断った。  十六時近くなるとバラバラと部員たちが集合場所に集まってきた。全員揃ったのは五分ほど遅れた頃だろうか。 「それじゃあ、背が低い人は前のほうに来て、でかいのは後ろよ。もうちょっと中央に寄って」  全員が揃ったことを確認すると、お約束の帰宅までは部活動的な話や展覧会に向けて頑張ろうという意気込みで締め括り、残すは記念撮影のみになった。カメラを覗くあずみの指示で部員や参加者たちが整列していく。 「私の場所空けといてね。タイマーは十秒だからねっ」  整列した前列のほぼ真ん中辺りが一人分空いている。タイマーのボタンを押したあとにあずみが入り込むスペースだ。「それじゃあ、いきます」の声と共にあずみは素早い動きで定位置につく。そしてシャッターが下りる瞬間を知らせる光がちかちかと瞬き、カシャリと小さく音が響いた。撮り終わると再びあずみがカメラのもとに行き、その画像を確認して小さく頷く。 「あ、いまのでオッケーだけど念のためもう一回撮ります」  ひらひらと腕を上げて手を振ったあずみに、部員たちは間延びした返事をする。再度カメラを操作していると、あずみは背後に気配を感じたのか驚いて振り返る。そこには満面の笑みを浮かべた月島が立っていた。 「渉さんどうしたんですか?」  月島は仕事の都合上、本人の写真を撮ることが禁じられているので、先ほどまでベンチに座り集合写真を撮る部員たちを眺めていた。

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