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第683話 夏日 27-4

「そうなの、あちらの方たちと知り合いだから、積もる話もあるわけ。そういうことで私たちは私たちでもう行こう。ほかの部員たちと集まる約束してるのよね」  月島たちをあずみが手のひらで指し示し説明すると、あずみの母親は少しばかり驚いて目を瞬かせたが、皆一様に笑みを浮かべるのでとりあえず納得したようだ。俺のほうを振り向いて「優哉くんまたね」と声をかけてくれる。若干苦しい言い訳に聞こえるが、あながち間違ったことも言っていないので、俺は「すみません」と頭を下げてあずみの母親に笑みを返した。 「じゃあ、またねっ」  窓から顔を出したあずみがそう言うと、弥彦も含む三人を乗せた車はゆっくりと発進して去っていった。すると十数分前にはたくさんの人がいたこの場所は四人だけになり、一瞬しんとした空気が流れる。 「とりあえず俺たちも帰らない?」 「あ、ああ、そうだな」  このままではこの沈黙が長引きそうだと思い始めたところで、この空気を打ち消すようにのんびりとした声音で月島が先を促し肩をすくめる。そして佐樹さんがそれに応えると、月島は腰の辺りに引っ掛けていたキーチェーンから車のキーを取り、それを瀬名に投げ渡した。それを受け取った瀬名は少し呆れたようにため息を吐き出したが、なにも言わずに車に足を向ける。  そこにあったのは今時珍しい左ハンドルのベンツ。最近は外車でも右ハンドルが主流になってきたので、あまり乗る人は少ないだろう。そのベンツは小回りの効くタイプでそれほど大きさはない。  恐らく車に特別興味があるタイプに思えない月島のことだから、小回りが効いて乗り心地が悪くないもの、程度の注文でディーラー任せに購入したのだろう。しかし適当な注文かもしれないが、金はかかっているのはわかる。  座席のカバーに使われているレザーは質感もよく長時間乗っていても、疲労感はほとんどなさそうだ。そうなると運転席や助手席の座席も同様に乗り心地は良好だろうと推測できた。佐樹さんが運転席の後ろに乗り込み、俺は助手席の後ろに座る。そして運転席に瀬名、助手席に月島が座ると、四人を乗せたベンツは森林公園をあとにした。

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