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第699話 夏日 31-3
よく言えば相性がいいのだろうけど、あまり回数が多いとさすがに心配にもなってくる。しかし当の本人は気持ちよさそうな顔で気を失っているものだから、ふいに悪戯心を刺激されて揺さぶり起こしてしまう時もある。けれど途切れた記憶があまりないのか、ふっと意識が浮上すると素直に反応をしてくれ、加虐心が煽られてしまうのだ。
「今日は少なくとも二回は完全に飛んでましたよ」
「えっ、そんなにか」
「そんなにイイですか?」
驚きでほんの少し浮いた佐樹さんの上半身を覆うように、ベッドに両手をついて覗き込めば、顔が一気に赤く染まった。目を見開いた彼のその瞳に自分の姿が映り、なんとも言いがたい感情が胸の内に生まれる。それは征服欲が満たされるような気分だ。
しかしその瞳は一瞬で目の前から消えた。
「佐樹さん?」
突然タオルケットを頭から被ってうずくまってしまった佐樹さんの肩の辺りに触れると、びくりと大きくそれは跳ね上がった。そんな反応に首を傾げて顔を覗き込もうと試みるが、すっかりタオルケットでそれは遮られてしまっている。仕方なくベッドから下りて視線を合わせようと床に座り、俺はマットレスに顎を乗せた。しかしタオルケットのガードは堅い。
何度か声をかけるものの応答はなかった。けれどしばらくそのまま、またやり過ぎただろうかと小さなため息をついて考えあぐねていると、小さな呼び声と共にタオルケットの隙間から腕が伸びてきた。その手は探るように伸びてきて、俺の頬に触れ、髪を梳くと、子供をあやすようにぽんぽんと頭を撫でる。
「俺のせいじゃないって言いたいの?」
なだめるみたいに触れる優しい手に小さく笑って、自分の頭を撫でる手を取ると、俺はその指先に口づけを落とした。するとその指先は俺の手を掴み小さく握り締めた。
「こんなにいきなり順応している自分が恥ずかしかっただけだ」
「素直で可愛い佐樹さんは好きだよ」
「呆れてない?」
タオルケット越しにくぐもった声が聞こえてくるたび、頬が緩みにやけてしまう。
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