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第711話 夏日 34-3
キッチンへ藤堂と二人で買い物袋を持ち込めば、母が大型の冷蔵庫に生ものを手早く詰め込んでいく。袋の中身をそれとなく目で追うと、今日の夕飯は恐らくハンバーグやグラタン辺りではないだろうか。
「ねぇ、佐樹のお友達にしては彼、若い気がするけどいくつ?」
「え?」
ふいに背後から聞こえた声に振り返れば、保さんの隣に座った詩織姉が不思議そうに藤堂を見つめていた。その視線に少しそわそわしながらも、この二人には藤堂の紹介がまだだったと思い出した。母からどんな説明がされているかはわからないが、うかつなことも言えなくてほんの少し口ごもってしまう。とりあえず長女夫婦を紹介しようと藤堂の腕を引くと、やはりどこか緊張した面持ちで藤堂はこちらを見る。
「あ、えっと。あー、佳奈姉は以前に会ってるからいいよな。長女の詩織姉と旦那さんの保さん。で、こっちは藤堂」
ソファに座る二人を手のひらで示せば、詩織姉と保さんは「はじめまして」と笑った。保さんはいつものように、にこにこと笑っているが、詩織姉の視線は期待に満ちた輝きが感じられる。思えばうちの女性陣は母を筆頭に面食いでミーハーだったと思い出し、苦笑いが浮かんでしまった。
「はじめまして藤堂優哉です。いまは十八で佐樹さんが勤務している学校に通っています」
「え、あら、嘘っ。高校生なの? 大学生くらいかと思った」
まっすぐな詩織姉の視線を受けながらも藤堂は二人に向かい頭を下げた。予想外過ぎたであろう藤堂の年齢に、驚きのあまり身を乗り出した詩織姉だったが、誠実そうな雰囲気は感じ取れたのか藤堂を見る目は優しい。
「さっちゃん、まだ大事なこと言い忘れてるわよ」
「えっ」
しかしこれからどう切り抜けるかと思い巡らせていたら、急に母の鋭い声が聞こえてくる。いつもはのんびりとした母のそんな声に、家族は皆少し驚いたように目を見張った。
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