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第735話 夏日 40-3

 初めて会ったのは中学一年生の頃だったはずだ。その時でも少し視線が上だったから、多分百七十後半か、それより高かっただろう。 「春の身体測定では八十四でした」 「もう伸びてない?」 「高校入ってからはそんなに伸びてないですね」 「でもまだ若いからいつ伸びてもおかしくないよな。まあ、僕は中学卒業からまったく伸びなかったけどな」  子供の頃は背の高い部類だったが、歳と共に整列する順番が前になっていくそんな感じだった。家族全員が百六十、百七十前後なので期待はしていなかったが、かなり不服であったのは確かだ。 「優哉くん着たことないなら来年はさっちゃんと二人で着たらどう? おばさん縫ってあげる」 「え?」 「んー、藤堂も着るなら考える」 「じゃあ決まりね」  嬉しそうに笑う母に藤堂も少し気恥ずかしそうに笑う。また来年、そう考えるとなんだかとても嬉しくなった。  それから佳奈姉が風呂から上がり、母がソファを立つまでのんびりと三人で話をして過ごした。いつの間にか気づけば時計の針はてっぺんを過ぎ、既に日付が変わっていた。そして二人で二階の部屋に戻る頃には眠気が襲ってきた。眠気でぼんやりして、客である藤堂に自分で布団を敷かせる始末だ。 「佐樹さん大丈夫? もう横になったら?」 「藤堂、そっちで寝たい」 「え?」  ベッドに腰かける僕を心配げに見つめていた藤堂の目が驚きに見開かれる。眠さに乗じて甘えたことを言っているのはわかっているけれど、傍にいるのに離れているのはなんとなく嫌だった。以前にもこれで困らせたのはわかっている。けれど目の前に立つ藤堂に腕を伸ばして僕はぎゅっと強く抱きついた。 「佐樹さんそんなに可愛く甘えられるとかなり困るんですけど」 「うん、わかってる。でも一緒に寝たい」 「あ、いや、これは全然わかってないですよね」  胸元に頬を寄せて擦り寄り抱きつく腕に力を込めると、それを阻むように藤堂の手に肩を押し引き剥がされそうになる。

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