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第736話 夏日 40-4
「佐樹さん、あんまりそんな風に無防備に近づかれると触れたくなるので、止めてください」
「なんで?」
「佐樹さん、頼みますから誰にでもこういう真似するのだけは、絶対にしないでくださいね」
言葉の意味がよくわからなくて首を傾げたら、大きなため息と共に覆いかぶさるように身体を藤堂に押されて僕はベッドの上に転がってしまう。そして目を瞬かせ状況を理解する前に唇にぬくもりが触れて、力の入っていないそれを割り、ぬめりを帯びたものが舌に絡みつく。突然の深い口づけに開いた唇の隙間からくぐもった僕の声が漏れ、次第に口の端から二人分の唾液が伝い落ちる。
性急なその行為にしがみつくように藤堂の腕を掴んだら、Tシャツの裾から藤堂の手が滑り込んだ。ふいに感じた人肌にびくりと無意識に肩は跳ね上がり、思わず身体をよじったらますますそれを抑えるように藤堂の身体が密着する。そして手のひらで身体を撫でられ指先をゆっくりと這わせられれば、あられもない声が漏れそうになる。しかし唇を塞がれているのでその声は飲み込まれた。
「んっ……藤堂、やっ」
しかし塞ぐものがなくなれば自然と声は漏れてしまう。
「佐樹さん、声」
「無理、無理っ、あっ」
口内を存分に味わったであろう舌先が、唇から伝い落ち首筋や耳たぶを優しくなぞる。わざとなのか弱い場所ばかり触れられて、身体が跳ねそのたびに声が漏れてしまう。必死で口を両手で塞ぐけれど、下肢を膝頭で擦り上げられれば抑えようとしても上擦った声が出て、身体が身悶えるように仰け反る。
「佐樹さんが我がまま言うからいけないんですよ」
「駄目、無理っ、んっ」
お仕置きだと身体中を余すことなく指先や舌先で触れられ、身体を熱くした僕は終いに藤堂の手で果ててしまった。浅く呼吸を繰り返すそんな僕を見下ろす藤堂は艶っぽくて、でもどこか意地悪げな目をしていた。
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