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第737話 夏日 41-1
藤堂に意図して触れられるのは普段触れられるのよりも何倍も緊張するし、心臓の鼓動が馬鹿みたいに早くなってくる。声を押し殺していなければいけない状況も、その気持ちを煽るばかりだった。
昨夜は散々焦らされ追い詰められ、最後のほうはもう気持ちが高ぶり過ぎてあまり覚えていない。夜中にふっと目が覚めた時には、狭いシングルベッドで藤堂に抱きしめられていた。静かに眠る藤堂の顔が目の前にあり、それは予想できないほどの近さだったので、心臓が大きく跳ねた。けれどその寝顔を見つめていると幸せな気持ちにもなれた。
胸元に擦り寄って目を閉じると、抱きしめてくれる藤堂の腕に力がこもってさらに引き寄せられる。ふと視線を持ち上げて藤堂を見つめたが、起きている気配はなく、無意識の行動のようだった。
それからしばらくすると再び僕にも眠気がやってきて、窓から吹き込んでくる夜風で暑さも感じることもなく、そのあとも朝まで二人離れずに眠っていた。そしてカーテンを閉めていなかったので、朝日が昇り始める頃には目が覚めた。
次第に朝陽が部屋の中へ射し込み始めると、藤堂が眩しそうに少し眉をひそめる。なに気ないそんな表情に思わず笑いながらも、僕はそっとレースカーテンを引いて部屋に降り注ぐ光を和らげた。しばらくそのまま藤堂の寝顔を見つめていたが、時刻も六時になり、そっと身体を起こしてベッドから抜け出す。家にいる人数が多いと色んなところが渋滞しがちになる。
藤堂の携帯電話の下にメモ紙を残して、僕は部屋を出た。するとちょうど隣の部屋の佳奈姉も部屋から出てきた。
「おはよう」
なに気なくいつものように声をかけるが、佳奈姉はじっと人の顔を見つめてしばらく身動きしなかった。その反応がわからなくて首を傾げたら、大きく肩で息を吐かれる。
「なに?」
「いやー、別に、昨日は随分お楽しみのようだったようで」
「……はっ? え?」
一瞬首を捻りかけて、ふっと頭をよぎったものに時間が止まったような気がした。考え込んで伏せた視線を持ち上げてみれば、目を細めてじっとこちらを見る佳奈姉の視線と思いきりぶつかる。
「隣があたしでよかったわね。姉さんだったら途中でカチコミされてたかもよ」
「え、あ、ってそんなに、その」
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