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第743話 夏日 42-4
同性同士だとか、歳が離れているだとか、目につくところや気になることは多いかもしれないけれど、それだけのことで藤堂を測らないで欲しい。人として見てどういう人間なのかを感じて欲しい。僕にとって藤堂の存在がどれほど尊いのか、それを知って欲しい。
「……うん、わかった」
しばらく目を伏せて考え込んでいたが、大きく首を縦に振り頷いた詩織姉はきゅっと引き結んでいた口を綻ばせ、口角を上げて僕に笑顔を見せた。そんな姉の笑顔に僕も自然と笑みがこぼれる。
「佐樹、大好きっ」
「えっ」
そして身構える間もなくいきなり、機嫌よさげに詩織姉は腕を広げて抱きついてきた。そんな急な行動に受け身が取れるはずもなく、僕は後ろに転がるように尻餅をついてしまう。けれど締め付ける勢いでぎゅうぎゅうと抱きつく姉に、僕はため息交じりに背中を何度か優しく叩いてあげた。
「二人でなにやってんの。テーブルまだ?」
「もうすぐ」
呆れ顔で近づいてきた佳奈姉に苦笑いを返せば、肩をすくめられた。そして手早く慣れた手つきで佳奈姉はテーブルを完成させてしまった。
「もう向こう魚さばいて焼く準備始まってるわよ。これあっちに持って行くから端を持って」
テキパキとした動きでテーブルを立て直すと、佳奈姉は顎でテーブルの端を持つよう促す。目を細めて見下ろす佳奈姉の視線に、いまだ首にぶら下がっている詩織姉の腕を解いて立ちあがった僕は、言われるままにテーブルの端を掴み持ち上げる。ゆっくりと藤堂たちのところへ向かえば、岩場の平らな場所で母と藤堂が魚をさばいてハラワタを除いていた。そして保さんは炭火の傍で綺麗にさばかれた魚を串に刺し焼き始めている。なんだかその様子がキャンプをしているようで自然と笑みが浮かんできた。
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