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第745話 夏日 43-2
なにかあったのはなんとなく察したが、二人がここまでやってきた驚きがいまだになくならない。
「あ、それは、渉さんと以前に連絡先を交換してて、私が先生の実家の住所を聞いちゃったの。勝手にごめん」
「ああ、渉さんに聞いたのか。それはいいけど、バスでここまで来たのか?」
片平の言葉になるほどと納得して、それでもこんな遠くまでよく来たものだと心配にもなる。
「ううん、弥彦のお父さんが車でここまで送ってくれたの。私たちはふた駅先にあるキャンプ場に泊まりで遊びに来てたんだ」
「もしかして、藤堂もそのキャンプに参加してることになってるのか?」
なんとなく言葉を交わしているうちに話の流れが見えてきた。ぎこちなく頷いた二人の表情で余計に確信めいたものを感じる。先ほどの藤堂への謝罪といい、急な二人の登場といい、これは訳ありだと僕は悟った。そしてその原因にも目星がつく。
「どうしたの、お客さん?」
「えっ、あ……」
四人で顔を突き合わせていると、後ろから追いついてきた母が僕に声をかける。その声で我に返り振り返れば、そこにいた姉たちや保さんまでもが一様に不思議そうな顔で僕たちを見つめていた。
「あ、えっと、二人はうちの学校の生徒で片平と三島。ちょっと藤堂に急用があってきたみたいで」
そんな視線と表情に慌てて僕は片平と三島を母たちに紹介する。けれどまだ驚いているのかその反応は鈍い。しかしそれでも母はなんとなく僕たちのあいだに流れる微妙な緊張を感じ取ったのか、じっとこちらを見つめ小さく首を傾げた。
「とりあえず立ち話もなんだから中に入りましょう。詩織と佳奈は着付けとか準備あるでしょ? 先に支度してなさい。保さん荷物の片付けお願いしていいかしら」
テキパキとみんなに声をかけた母は、安心させるように片平と三島に優しい笑みを浮かべて家の中へと促した。
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