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第748話 夏日 44-1

 心がまっすぐな母に嘘をつかせるのは気が引ける。けれど母の提案はいまの状況にはいい選択であるのも確かだ。そっと母の顔を覗き込むようにして見ると、僕の視線に気づいた母は小さく頷いた。 「キャンプに参加してないのは嘘になっちゃうけど、三人が一緒にいることで解決できるならそれでいいと思うわ。それに、さっちゃんも優哉くんもお祭り楽しみにしてたでしょう。これじゃあ、駄目かしら?」  ふいに母は視線を流し、片平と三島のほうに向き直った。そんな視線にじっとことの成り行きを見つめていた二人はしばし顔を見合わせた。そして小さく頷き合うと二人は母に視線を戻す。 「私たちはそれでも大丈夫です。皆さんのお邪魔にならなければそうさせてもらえるとすごく助かります」 「でも送ってもらったり、泊まったりというのは迷惑じゃないですか?」  少しまだ戸惑いがちな片平と三島の表情に、母はまた笑みを深くして首を大きく横に振った。 「平気よ。それでみんなが安心できるならおばさん大歓迎だわ。お祭りから帰ってくるまでに電話がなかったら遠慮なく泊まって行って」 「でも泊まる部屋どうするんだ」  この家には一階に母の使っている和室と、二階に僕、佳奈姉の部屋、客間しかない。部屋数を思い浮かべて首を傾げれば、母も少し思案するように首を傾げた。 「そうね、私が佳奈の部屋に行って和室を空けて使ってもらうのでもいいけど、いくら仲よくても男の子と女の子を同じ部屋に泊めるのはよくないわよね」  あとできる対応策といえば、詩織姉のいる客間に片平を泊めて、保さんに和室へ移動してもらうことくらいしかない。 「あのっ」  どうしたものかとしばらく僕と母が二人で頭を悩ませていると、突然片平が挙手をした。 「私と弥彦は同じ部屋で平気です。もう家族同然の仲なので今更気を遣う間柄じゃないので平気です。だよね?」 「あ、うん。あっちゃんがいいなら俺も大丈夫です」  二人顔を見合わせ頷き合う姿を見て、僕と母はそれならばということで話は落ち着いた。そして今後の予定が決まり、母は早速二人の親たちに連絡を取った。向こうも突然のことに少し驚いていたようだが、そのあとすぐに二つ返事で了承をしてくれたようだった。

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