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第760話 夏日 47-3

 そう考えると、こんな状況で本当に僕のことが知られていないのだろうかと疑問が湧く。以前に藤堂は連絡を取ることさえ躊躇いやめてしまったこともあるのだ。それは連絡を取り合っていると、僕の存在が知られてしまう可能性があるということを暗に示しているのではないか。  そんなことを考えると胸に焦りのような重苦しい気持ちが広がっていく。もしもこれが母親だけでなく学校側に知られた場合、藤堂の処遇はどうなるだろうかという心配が真っ先に浮かんできた。成績も優秀だし、人柄も合わせて学校での藤堂の評判はいい。とは言えなんのお咎めもなしとはいかないだろう。停学などになったりはしないだろうか。  こんなことを言うと藤堂は怒るだろうが、僕自身が免職を問われるのは覚悟しているので構わない。けれどもし藤堂がなにかの処分を下されることになるのは避けたい。あと半年ほどだ、このまま藤堂の母親にも学校側にも知られることなく過ぎてくれればいいと切に願うばかりだ。  しかしそんな不安が湧いては来るけれど、それでも別れようという選択肢は浮かんでこないのだなと、自分の気持ちを改めて自覚する。 「……さん、佐樹さん」  ふいに耳元で声が聞こえ、肩に触れる手の感触に気づき思わず肩を跳ね上げてしまった。はっと我に返り瞬きをすれば、目の前には車のライトに照らされた実家の庭が見える。どうやら考えごとをしているうちに家に着いていたようだ。  心配げにこちらを覗き込んでいた藤堂を振り返ると、ほっと息を吐かれた。 「大丈夫ですか?」 「ああ、悪い。ちょっとぼんやりしてた」  苦笑いを浮かべて返すと、藤堂も困ったように苦笑する。こんな顔をされては悩んでいたことなど口に出せないなと思ってしまう。余計な心配を増やしたくない。僕が不安になっていてはいけない気がする。

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