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第767話 疑惑 1-2

 まだ十分ほどあるのでもうしばらくかと思ったところで、ガードレールを挟み車が一台近づいてきた。そして助手席側のウインドウが下りて、男性がこちらへ身を乗り出す。 「すみません。月島くんの代理で迎えに来た戸塚と言いますが、佐樹さんと優哉くんに一真くんですか?」  振り返った先にいたのはスーツ姿の温和そうな雰囲気の男性で、歳は僕と同じくらいかそれより少し上くらいに見える。小さく首を傾げながらこちらを見る目も優しげだ。 「あ、はいそうです」 「よかった。少し前に着いて、二人には気づいていたんですけど、三人と聞いていたので声をかけずにいました」 「え! 待たせてしまっていたんですか」  ほっとしたような笑顔を浮かべた戸塚さんに頭を下げると、慌てて「大丈夫です」と手を振られた。しかしおそらく十分や十五分くらいは前に来ていただろうことは推察できる。もう一度頭を下げたら、穏やかな笑みを返され車へ乗るよう勧められた。 「月島くんから資料もらって話には聞いてましたけど、二人とも写真で見るよりもずっと男前ですね」  にこにことした笑みを浮かべながら、ちらりとバックラー越しに後部座席の藤堂と峰岸を見た戸塚さんは、鼻歌でも歌い出しそうなほど機嫌がよさそうに見える。 「戸塚さんは渉さんとはどういった繋がりなんですか」  二人のことも今回のことも知っているのだから、仕事の繋がりであるのはなんとなくわかった。しかし渉さんの性格からすると、こういうことはよほど親しくない限り頼んで任せることはしない。なので戸塚さんはただの仕事繋がりというより、もう少し渉さんに身近な印象を受けた。 「僕は基本的に月島くんのスケジュール管理するのが仕事ですけど、それ以外は会社で営業をやっています」 「え? もしかして、渉さんがプロになったきっかけになった人ですか!」 「あ、やだな、月島くんそんなことまで話してたんですね。ええ、まあ、僕が声かけたのがきっかけかな」  少し恥ずかしそうに笑う戸塚さんの横顔に、僕はとても高揚した気分になった。

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