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第769話 疑惑 1-4

「でももしかしたら、峰岸も藤堂もそういうタイプかもな。まだお前たちは歳に風格が追いついてない感じがする」 「なんだよそれ、老けてるってことか?」 「んー、大人びてるってことだよ」 「それ言い方違うだけだし」  軽く笑ってしまった僕にほんの少し眉をひそめた峰岸は、口を曲げて不満をあらわにする。そういうところは子供らしいと言えば、ますます不服そうな顔をした。子供らしくても大人びてると言っても不満なのか。難しい年頃だなと肩をすくめたら、そういうことじゃないとぶつくさ言われた。 「自分が心を寄せた相手にはちゃんと認められたい。月島くんも昔からそんな感じだったよ」 「承認欲求ですか?」 「そうそう、一人の人間として認められたいって気持ちですよ」 「なるほど」  ほかの子たちよりも色々と聡い分だけ、一人前に思われたいのかもしれない。確かに自分より年上の人といると、その人に一目置いてもらいたくなる。それは人として当然の感情と言えばそうだ。ちらりとバックミラーから峰岸の顔を盗み見れば、照れくさくなったのか視線を窓の外に向けている。  それから目的地までの五分を、僕と戸塚さんは和やかに会話しながら過ごした。物腰が柔らかい戸塚さんは、すごく相手に癒やしを与える人だなという印象がある。なんというか、いい意味ですごく肩の力が抜けた。相手にまったく緊張をさせないタイプだ。 「さあ、着きましたよ。どうぞ、この建物内にあるスタジオが今回の撮影場所になります」  守衛のいる門を抜けて駐車場に車を駐めると、戸塚さんが手を招いて僕たちを誘導した。目的の建物は少し古びた印象を受けるが、鉄筋の四階建ての頑丈そうな佇まい。降り立った広い駐車場には車が何台も止まっているので、人の出入りはかなり多いのがなんとなくわかる。敷地はおそらく思っているよりも広そうで、外からでは奥のほうまで窺えない。こういった建物は結構入り組んでることが多いから、一人で入ると迷子になるのが容易に想像できる。  置いて行かれないようによそ見をせず、僕は戸塚さんのあとを追いかけた。

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