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第771話 疑惑 2-2

「おはようございます」 「あ、おはようございます。こちら今日お願いする優哉くんに一真くん、よろしくね」  恐縮しているあいだにも開きっぱなしだった扉をノックしながら三人ほど室内に入ってきた。その面々を見ると、戸塚さんは笑みを浮かべて挨拶を返し、その三人に藤堂と峰岸を紹介する。 「スタイリストの宮原くんにメイクの桜井さんにアシスタントの神谷さん。三人とも月島くんのお墨付きだから、なにか気になることやわからないことあったらなんでも聞いてね」  少し緊張した面持ちになった藤堂と峰岸に紹介されたのは、裏方とは思えないほど顔立ちの整った宮原くん、すらりと背の高いモデルのような桜井さんに、小柄で可愛らしい印象の神谷さん。みんな二十代半ばか後半くらいだろうか。三人ともすごくおしゃれで、こういう世界は裏方さんもこんなにそれぞれ雰囲気があるのかと感心してしまう。 「お墨付きとか、またまた! 戸塚さんそんなこと言ってもなにも出ないですからね。でもまあ、やるからには精一杯頑張るのでよろしく」  三人の中で一番歳上であろうと思われる唯一の男性、宮原くんがおどけたように笑うと、ほかの女性二人もつられたように笑い「よろしく」と片手を上げてひらひらとその手を振った。そして改めて藤堂と峰岸を見つめて三人は感嘆の声を上げる。 「写真で見てたけど生は違うね。お肌つやつやだし、足長いし、ほんとに格好いいね」 「顔、小さいね」 「へぇ、素人さんには見えないな」  三人に囲まれてさすがに気圧されたのか、藤堂と峰岸の笑みが少しばかり強ばった笑いに変わる。終いには遠慮なく肩や背中や髪などに触れられ、二人は固まったように動かなくなった。 「じゃあ、二人のことは頼んだよ。佐樹さんはスタジオのほうへ行って見ましょう。月島くんも待ってると思うから」 「あ、はい。じゃあ、えっと……藤堂、峰岸よろしくな」  少しばかり急ぎ足な戸塚さんにつられ二人に片手を上げると、二人はこちらに視線を向けてぎこちないながらも微笑んでくれた。その笑顔に少し救われた気分になる。

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