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第788話 疑惑 6-3
慌てて身をよじるけれど藤堂の腕はそれを許してくれない。耳たぶを食み、着ているカットソーの上から身体のラインを辿るように手を滑らされれば、意識しなくとも身体がじんと痺れるような感覚に陥る。そしてそんな自分の反応に、顔の熱が全身に広まるような気がした。
「駄目、だ。ほんとに、……っ、変な気分になる」
自分で言っていて恥ずかしいことこの上ないが、身体は正直だ。一度教え込まれた感触は忘れようがなくて、触れる唇が、そして手がじわりと奥底の熱を引き上げる。
「佐樹さん、いやらしくなったね」
「は? 馬鹿! 誰がそうし」
「俺ですね」
耳元で小さく笑われ囁かれた言葉に心臓が跳ね上がった。楽しげな雰囲気をまとう藤堂を睨んでやろうと思ったが、耳たぶを食んでいた藤堂の唇はそこを離れ、文句を紡ごうとした僕の唇に触れる。そして唇と舌先で僕の唇をたっぷり味わった藤堂は、ほんの少しの口づけだけで息を上げている僕に目を細めてさらに奥へと入り込んできた。
舌先が擦れ合い絡め取られれば、次第に僕は抱きつくというよりもしがみつくが正しい状態になってくる。涙でぼやけた視界で藤堂を見つめると、ますます口内を優しく舌先で撫でられた。身体を撫でる手と口内を撫でる舌先に頭が沸騰しそうになってくる。
「と、藤堂。ほんとに駄目、だ」
切れ切れの息でなんとかそう紡ぐと、唇がやっと離れてしっとりと濡れた僕の唇を藤堂の舌が辿るように撫でる。その感触に肩が震えて、熱くなる頬を誤魔化すように俯いた。そしてまっすぐ立っていられなくなった僕は背に回していた手を解くと、胸もとにしがみついて藤堂にもたれかかるように肩口に頬を寄せる。
「前より敏感になってきた?」
「そういうこと言うな」
「すみません、ちょっと可愛くて」
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