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第791話 疑惑 7-2
朝から夜までずっと撮りっぱなしだったから、百単位で撮ったはずだ。三ページも増えたと聞いたけれど、それでもきっと掲載されるのは十分の一くらいな気がする。
そう考えると、なに気ない気持ちで眺めているものにかかる労力というものを改めて感じた。
「そうだ、一真。大学合格できたらいいところ紹介してあげるよ」
「あ、マジで?」
「ん? 峰岸、やっぱりモデルに興味あるのか?」
「あー、まあ、なんとなく」
渉さんの声に視線を向けると、峰岸は少し照れくさそうに笑った。そういえば最初から峰岸はこの話に乗り気なところはあった気がする。今日やってみて思いのほか楽しかったのだろう。撮影中はかなり生き生きとしていた。峰岸ほど華がある男ならそこそこ成功できそうにも思える。
仕事の話を楽しそうに聞いている横顔を見るとなんだか少年らしくて可愛い。
「あ、お肉きたよ。たくさん食べてね」
そうこうしているうちに見るからに上質そうな肉が山盛りやって来て、二枚の網の上にどんどんと載せられていく。手際よく戸塚さんが肉を返せば、それは次から次へと峰岸の腹に収まっていった。そんな様子にあっけにとられていると、程よく焼けた肉を藤堂が皿に移してくれる。
「佐樹さんも食べないといいところ全部食べられちゃいますよ」
「ああ、うん。ありがとうな」
「なにが好きですか?」
「んー、ハラミとタン塩」
網の片側を峰岸に譲るともう片方の網で藤堂が僕の好きなものを焼いてくれた。食べるスピードに合わせてゆっくりと焼いてくれるので、空になった皿にひょいと載せられるとついつい箸が伸びてしまう。
「あ、来られたんだね! こっちこっち!」
しばらくみんなで焼き肉に夢中になっていると、ふいに戸塚さんが顔を上げて誰かに手を振る。その声に全員が疑問符を浮かべて戸塚さんの顔を見た。満面の笑みは親しい相手に向ける優しい顔だ。一体誰が? と首を傾げたところで、その人物が僕たちのいる席までやって来た。
渉さんの背後にある衝立に手をかけ、こちらに顔を見せたのは夏の部活動以来の人物。
「は? なんで君がここにいるわけ?」
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