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第801話 疑惑 9-4

「白もある?」 「ありますよ! 家に帰ったらカタログあるので明日学校に持っていきますね」 「ああ、ありがとう」  とりあえず購入する機種を決めておけば、迷って予定外のものを勧められることもないだろうと安堵した。明日の空き時間に間宮のカタログを読ませてもらおうと思ったら、なんだか新しい携帯電話が楽しみになってくる。 「あ、電車来ましたよ。これ乗りますよね?」 「ああ」  先ほどまでは気持ちが落ち着かずに何本か電車を見送っていたけれど、間宮の声に自然と腰かけていたベンチから立ち上がっていた。こういう時に気の知れた人がいるというのはなんとなく心強いなと感じる。 「間宮の家はこの沿線なのか?」 「いえ、違いますよ。西岡先生と同じ沿線で二つばかり先に行ったところです」 「え? そうなのか。じゃあ今日はほんとに偶然だったんだな」 「はい、この駅に知り合いがいるので」  こんなところで偶然出会うというのも驚きだ。そして思ったよりも近くに間宮が住んでいたことがわかり、さらに僕は驚きをあらわに目を瞬かせる。彼が学校に赴任してからかれこれ三年、今年で四年目にだったろうか。それなのにこれまで電車の行き帰りなど一緒になることはなかった。 「近くに住んでてもあまり会わないもんなんだな」 「そうですね」 「まあ、時間がちょっとずれるだけでも違うしな」  通勤電車は行きも帰りも混み合っているので同じ車両でもよほど近くにいない限り気づかないかもしれない。さして珍しいことでもないなと肩をすくめると、間宮もそんな僕を見つめながら小さく笑った。  それから五十分ほど、和む間宮の雰囲気に落ち着きを取り戻した僕は、他愛もない会話をしながら電車に揺られた。

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