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第810話 疑惑 12-1
放課後になってから間宮と二人で駅前にある携帯ショップへと向かった。長らく故障することもなく同じ携帯電話を使っていたので、ショップには随分と久しぶりにやって来た。店頭に並んでいる機種は大きな画面と薄さが売りであろう最新型ばかりで、折りたたみの携帯電話が置かれているのは店頭のごく一部分だ。
けれど間宮が持ってきてくれたカタログがあったおかげで、希望の機種も色も伝えられ、スムーズにことが済んだ。
「ありがとうございました」
店員の笑顔と共に僕は手渡された紙袋を受け取る。そして背後のソファに腰かけていた間宮に目配せすると、すぐに出入り口へと向かった。
「待ってるあいだ暇だっただろ?」
「いえそんなことはなかったですよ。大丈夫です」
「だったらいいけど。でも思ってたより早く終わった」
僕の携帯電話は古い機種で全損だったので多少時間を取られたが、想像していたよりもずっと早く手続きが終わった。
「普段そんなに使わないけど、ないとないで落ち着かないもんだな」
「いまの時代は携帯電話がないと不便ですよね」
「確かに」
毎日連絡をくれる相手は藤堂くらいしかいないが、繋がらないと思えばなんとなく急用があったらと余計な心配をしてしまう。
壊れた本体は電源が入らなかったけれど、データのほうはメモリカードが生きていて、なんとか新しい機種に移してもらえた。これでいつ誰から連絡が来ても慌てることはないだろう。それにしても昔は機種変更のたびに何時間も待たされたような気がしたが、僕の古い記憶などあてにはならないようだ。真新しい携帯電話を手に僕は目を瞬かせてしまう。
「そうだ」
しばらく携帯電話を見つめていた僕は、思い出したように携帯電話を開くと真っ先にメール画面を表示する。そして一番に連絡しようと思っていた藤堂へ向けて、新しい携帯電話を買ったとメールを打ってほっと息を吐いた。
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