814 / 1096

第814話 疑惑 13-1

 それから間宮の紹介してくれた病院で診察を受けたが、手首は幸いなことにひびなどは入っていないようで、どうやら捻挫らしい。身体のほうも痛みの割に大きな傷になどにはなっておらず、打撲程度で済んだ。しかしどちらも腫れが引くまではしばらく痛みがあるだろうと、大量の湿布薬と念の為に痛み止めを処方された。  湿布が取れるまでは湿布臭いと生徒たちにからかわれそうだなと、僕は思わずため息をついてしまった。 「藤堂にはなんて言おう」  身体のほうはともかく、手首はひと目でなにかあったとわかってしまう。また心配をかけて困らせてしまうと思えば、申し訳なさが込み上がる。 「階段から落ちたと正直に言うか」  心配をかけるのも気が引けるが、下手に誤魔化してあとから追求されるのも困る。おそらく身体の打撲痕も遅かれ早かれバレてしまう気がして、聞かれたら素直に答えるのが得策かもしれない。でも誰かに突き落とされたとまでは言えない気がする。そんなことを言ったらどんな顔をするか、想像すると胸が痛む。  結局、病院に行ったあとは電車の中で間宮と別れた。落ち着いて食事をする状況でもなかったので、食事を一緒にするのはまた今度となった。しかし腹は減ったままなので、食べ損なった晩飯を駅前のスーパーで調達すると、僕はすぐ近くにある自宅マンションへと足を向ける。 「あ、また来てる」  エントランスの自動ドアを抜けて郵便受けで足を止めた僕は、そこにあった不在連絡票を目に留めて顔をしかめてしまった。昨日と今日の出来事で忘れてしまいそうだったけれど、もう一つ気がかりなことがあるのを僕は忘れていた。  重たい気分のまま、マンションの宅配ボックスに手をかける。ゆっくりと扉を開くと、小包程度のダンボール製の箱が入っていた。手に取るとそれは見た目以上に軽い。

ともだちにシェアしよう!