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第816話 疑惑 13-3

「とりあえず聞くだけ聞こう」  けれど自分に半ば言い聞かせる形でなんとか送信すると、喉奥に詰めていた息が送信完了の文字と共に吐き出された。そして目の前に残された最後の難関に僕はようやく手をかける。  ダンボールの封をしているガムテープをはがし、深呼吸をしてから蓋を開く。 「ここまでは一緒だ」  ダンボールの底には箱の大きさに見合わない茶色い長封筒が一つだけ。それを僕は恐る恐る手に取り、封のされていない口を逆さにして中身をダンボールに振り落とした。すると唯一の重みであった封筒からバラバラと紙の束がこぼれ落ちる。これもいままでと同じだ。 「え?」  しかし今回はその中身を見た瞬間、僕は慌ててダンボールを逆さにしてテーブルの上にそれをぶちまけていた。そして紙の束――写真をテーブルに広げて息を飲んだ。 「嘘……」  裏返っている写真をすべて表向きに返して、僕は目を見張った。そこに写っている写真の大半はスーツ姿や私服姿の僕だ。けれどそのうちの数枚に藤堂の姿が映っている。その背景は見覚えのあるマンションのエントランスで、僕と並んで写っている藤堂はすべて私服姿だ。時間帯はバラバラなのか昼だったり夜だったり様々だった。 「これいつだ、最近じゃないな」  夏休み中に藤堂はほとんどここに来ることはなかった。それを考えるとそれよりも前になる。前の二件に入っていた写真は特別代わり映えのない僕の写真だったので、いつのものかまであまり気にしていなかった。でも考えてみると藤堂はまだ数えるほどしかうちに来ていない。私服姿と言うことは平日ではないし、日にちはかなり限られてくる。可能性が一番高いのは連休のあとだ。

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