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第817話 疑惑 13-4
あの頃と言えば創立祭があった。その前は藤堂の音信不通。しかし藤堂の母親は付き合っている相手までは特定していないと思うと、藤堂は言っていた。
「わからない」
藤堂の写真を抜き出して数えると十枚程度しかなく、残りの大量な写真は僕だけが写ったものばかりだ。これを送りつけてきた人物が藤堂の母親ではないのだとしたら、はっきり言って相手の意図がよくわからない。
思わず僕はテーブルに額をあずけて小さく唸ってしまった。写真が送られてきた時は真っ先に藤堂の母親が頭に浮かんだ。僕の身元がバレたのかと思ったのだ。けれど一度目、二度目と届いたあとも藤堂からそれらしい話は聞かされていなかったので、確信が持てなかった。
そしていまも、たまたま藤堂が一緒のところを撮られただけなのではという疑念も拭えない。枚数が少な過ぎるし、これだけでは僕と藤堂の関係を示唆しているとは考えにくい。
けれどそれ以外だとしたらなにがあるのだろう。なにかの脅しなのだとしても、別段代わり映えのない写真だ。薄気味悪さは感じるがネタにされるような代物ではない。
「駄目だ。全然わからない」
他人に写真を送りつける相手の気持ちなんて考えたこともないし、あまり考えたくもない。正直八方塞がりという感じで、僕はまた唸り声を上げることしかできなかった。
「明良に聞いてみるか」
テーブルに置いていた携帯電話を掴むと、僕はまたメール画面を開いた。そして気軽に相談するにはもってこいである親友の明良にメールを打つことにした。藤堂に相談するにはまだ状況が曖昧過ぎて、なにから話したらいいのかわからない。
昨日のことや今日のことも話さなくてはいけないかもしれない、そう思うとなんとなく余計に言いにくい気がする。先ほど藤堂に打ったメールは早とちりだったかもしれないなと、僕は少しばかり重たい息を吐いた。
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