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第818話 疑惑 14-1

 立て続けに起こった事故から時間が過ぎ、一ヶ月ほど経った。その間も相変わらず小包は不定期に届いている。いったい誰がなんのためにそれを送りつけているのかはいまだ不明だ。藤堂の写真は入っていたりいなかったり、でも確実にわかったのは写真がどんどん最近のものになっていっているということだった。なんだか少しずつ近づいてきているような気がして不安が募る。  相談した明良は仕事と恋人に忙しいらしく、何度かメールをやりとりしたが、とりあえず今度会った時に詳しく話を聞いてやるからと、まだ解決にいたっていない。ただ「彼氏に相談しろ」と釘を刺された。僕が藤堂に遠慮して口を閉ざしていることをすぐに気づいたようだった。さすがに長い付き合いなだけあって僕の性格をよく心得ている。 「けどなんて話したらいいのかわからない」  不審な小包だけであれ以来これといって身の危険を覚えるようなことには遭遇していない。写真が届いているだけでは身辺に気をつけようがなく、藤堂に話してもいらぬ心配をかけるだけではないかとも思ってしまう。それに藤堂の話ではこれといって彼の母親に変わりはないと言っていた。ここの関連性が薄いのであればやはり心配をかけたくない。 「佐樹さん」 「……あ、もう風呂上がったのか」  ふいに名前を呼ばれて顔を上げると、廊下とリビングを仕切る扉が開かれていて、藤堂が僕を見つめて不思議そうな表情を浮かべていた。今日は週末なのでいつものように藤堂は泊まりに来ている。Tシャツにスウェットというラフな出で立ちで、こうしてうちにいるとすごく安心してしまう。思わず笑みを浮かべたら、やんわりと目を細めて微笑みを返してくれた。 「なにか淹れようか」 「大丈夫ですよ」 「そっか」  キッチンに向かう藤堂の背中を見つめながら、僕はぼんやりとこれまでのことを考えてみた。駅のホームでの事故、あれは人混みの中の僕を選んでのことだったのだろうか。

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